ミッションと成果

穀潰しとかいう話がいう話が一部で話題になっているみたいですが、読んでるとなんか微妙な議論ですけど、仕事って何?っていう意味で時期的にもアレなのでちょっと書いてみようかなと。

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ある程度の規模の会社で働くということは、それが平社員であってもマネジメントであってもエクゼクティブであっても、バリューチェーンのごく一部にしか携わらないのは不可避なわけで、いや、自営業や農業の人だってサプライチェーンのごく一部しか携わっていないことを考えると、誰も一人だけの力で稼いでいる人なんていないわけですよ。これ前提です。
バリューチェーンはさまざまな要素から構成されているわけで、部分的にとってみればそれがどう売上や利益につながっているのかわからない部分も多いものなのです。たとえば、弁護士さんってとっても高給なイメージですけど、法務部門がどう売上に貢献しているのか、明確に説明できる人っています?売上や利益との関連性が見えにくいのは、研究開発部門だけの問題ではないのです。
じゃあ、個々人はどうやって自分の仕事の意義を定義して、どうやって成果を測ればよいのかというのは、バリューチェーン(つまり企業)を構成する上での重要な設計要素になるわけです。

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企業で働く人には、それぞれに「ミッション」というのが決められます。ミッションというのは、その人がその企業に対してどのような貢献をするかということを明確に定義したものです。ミッションは、普通、直属のマネジメントとの話し合いで決まります。そのマネジメントも、それぞれさらに上位のマネジメントとの話し合いでミッションを決めているはずです。最上位では、経営者が出資してくれた人と話し合います。ミッションはコミットメントと呼ぶこともあります。
今の話を逆向きに説明すると、経営者は出資してくれた人に対して「売上をX%上げる」とか「利益をY%上げる」とかという約束をします。経営者はそれを「営業部門は○○製品の市場シェアをZ%上げる」とか「研究部門は××製品の次期バージョンのプロトタイプを□□までに完成させる」とかという風にブレイクダウンします。そうやって徐々にブレイクダウンされたミッションは、個々の社員の段階に来ると元々のミッションとの関連性が見えないくらいまで細分化され具体化されます。
つまり「利益のことは考えずに、何か新しいことをやる」というミッションが与えられたら、それは、なんらかの形でトップレベルの経営のミッションにつながっている。それが、企業というものだということを理解しなければいけないと思います。それに対して引け目なんて感じていたら、企業人としては失格ですよ。

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ミッションのことが理解できたら、成果を測るということを理解するのは簡単だと思います。十分に具体化されたミッションがあれば、そのミッションの達成度について考えればよいだけのことです。成果を他人の成果と比較して、数値化して給与に反映するということになると、難しい問題にぶつかりますが、成果を測るという概念自体は簡単なことです。

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ところで、高待遇を受ける人というのはちょっと注意が必要だと思います。なぜなら、高待遇を受ける人というのは、その人でなければ達成が難しいミッションがあるから高待遇を提供されているわけなので、もし、上位レベルのミッションが変わって、その人のミッションが消えてしまったときには、その人が高待遇を受ける理由が消えます。そのため、その人でなければ達成が難しい別のミッションが見つけることが必須となるわけなのですが、最悪、適切なミッションが見つからない場合は企業から放り出されます。放り出されなかったら、これは本当の穀潰しということになるわけで。