マネーIQ リッチな定年後を送るための60の法則 (ISBN:4822243559)

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822243559/hatena-22/ref=nosim
かなり文句を言いたい本です。立ち読み程度なので、Amazonのレビューには載せませんが。


まず、家計のバランスシートを作っていますが、企業会計のやり方を形だけ真似たバランスシートを作っても、家計管理には何の役にも立たないです。特に「純資産(=資産−負債)」を重視していますが、一体この数字がどうなっていればどうなのか? 家計においては、純資産がマイナスになることは普通のこと(特に若くて奨学金を借りた場合など)ですし、そのために破産することなどありません。家計は、キャッシュフローにしか意味はないと考えるべきです。
企業会計と家計の違いは、「超簡単!「新」家計簿の付け方」のコラムに書いたとおりです。

おまけ
 ところで、家計と対を成す、企業会計の目的は何なのでしょうか?
 企業会計は、「営業循環」を適正・円滑に運営することが目的で行われます。営業循環とは、企業が現金を元手に商品を購入(原材料を購入し、製品を生産)して販売することで再び現金を入手するという、「現金」→「商品・製品」→「現金」という資金の循環のことを指します。この営業循環の間に、企業は付加価値を生産して利益を生み出していくわけです。この営業循環が適正・円滑に回転しなければ、企業は利益を生み出すことができないので、営業循環は企業にとっての生命線です。
 企業会計には、このような営業循環の考え方があるので、資産に商品や製品(仕掛品も含む)などを計上します。なぜなら、それらは近いうちに現金に変化するものと考えられるからです。また、固定資産にも同種の循環があると考えるため、固定資産も資産に計上します。
 家計管理で、家財道具や固定資産を資産として計上しないのは、企業会計とは対照的ですが、これは家計にはこのような営業循環を想定しないことからの帰結です。

上の理由から、建物や車両など、企業会計では資産とするものを、家計では資産とみなすべきではありません。ただし、土地は「投資」という観点から資産に入れることはありえると思います。


それから、「1億5000万円」が老後資金として必要と書いてあるものの、算出の根拠がいまいち薄弱。自分で計算しないで、誰かが書いた論文の計算式を使って計算しているだけ。本当に、人生設計をきちんとやるならば、きちんと自分で計算して、なぜその金額が必要かを理解するべきです。
しかも、1億5000万円の資産を作るために、月額いくらの積立をすればよいかの記述は全くないのはなぜなのか? 「どんなに投資の腕を磨いても、元になるお金がなければ意味がない」という一番肝心なところを説明していないのでは、1億5000万円という数字を出した意味がない。
しかも、1億5000万円の中には、公的年金のみなし資産分も含まれることをきちんと説明していないことも問題で、この本を表面的に読むと、本当に1億5000万円の貯蓄を作らなければいけないように読めてしまうが、実は公的年金を考えるともっと少ない貯蓄で大丈夫なはずだ。


大体、1億5000万円なんて、サラリーマンの生涯賃金に匹敵する額で、とてもそんな額の貯蓄を達成できないことくらい、本を書く前に気づかなかったのだろうか?

参考)http://members.jcom.home.ne.jp/0541234201/genjitsu.htm