杉村太蔵氏について思う

この人、同世代なんだよね、という一点だけをもって、親近感を感じるところがあるのですよ。プライベートで出会う他の人を見ても、この世代の人にはこの世代の人からしか感じない親近感というのがあるのですね。
思うに、この世代の人は、社会人として物心ついてから、好景気というものを知らない世代なのです。大体、小学生の終わり頃にバブルが弾けて以降、経済というものは悪化するものだという恒等式だけを擦り込まれてきたような、そんな世代です。就職活動の時は、ちょうど氷河期にあたって、名立たる有名大卒業生が耳慣れない中小企業や派遣社員に大量に就職していった世代です。
そういう環境下にあると、少しでもものを考える人は、多かれ少なかれ次のような考えに行き着きます。つまり、会社も社会もいつ潰れてもおかしくないし、そうなったらどんなに忠誠を尽くしていたとしても簡単に裏切られる。そうでなくても、上司の気分だけで退職に追い込まれることだってある。だから、会社や社会がどういう状態になったとしても、自分だけは生き残っていけるように普段から準備しておかなければならない。自分にとって意味のないことには手をかけている余裕はない。逆に、なんとかして意味のあることを見つけて、そこに全力を注ぎこみたい。
そのせいで、自分にとって意味のあることを求めてさまよっている人もすくなくないように思います。中には、賽の河原のように、さまざまに手を広げて、そのどれもが芽を吹かずに悩んでいるひともいるように思います。
また、そういう立場から見ると、年上の世代、特に50代より上の世代のことは、極端に言えば、敵のように感じることがあります。バブルが弾けてから、すでに20年の年月が経とうとしているわけですが、未だに状況が改善する見通しが立たないのはなぜなのか。それは、経済の舵取りをしていた人々、企業のエンジンとなっていた人々が無能である以外に理由があるのでしょうか。この後に及んで、国にしがみついて老後の世話をしてもらおうなどと、どの口で言っているのでしょうか。
残念ながら、この世代は権力を持っていません。数でも負けています。だから、この世代の声が世の中に反映されるころには、きっともっとひどいことになっています。おそらく、そのときには、ゼロから日本経済をやり直さなければいけないことになっているのではないでしょうか。なぜなら、これまで20年間も失敗しつづけてきた人達が、今後成功するとはとても思えないからです。
今、世の中の景気がよいそうですが、まあ、信じられるわけがないですよね。ほとんどゼロの金利を引き上げることができない経済状況を好景気と呼ぶなんて悪い冗談としか言いようがありません。今年は日経平均が年間を通して2000円超も下落したそうですが、私のポートフォリオは絶好調でしたよ。世界全体の景気が拡大している最中に、日本だけ取り残されて停滞しているというのは、不景気というほうが実態に則しているのではないかと思います。
そういう私の立場からいえば、杉村太蔵氏の存在は、この人が国政で何かをやってくれるという期待などではなく(そんなことができるわけがありません)、今説明したような内容を同世代的な感覚で理解してくれそうな人が国会にいる、という点で思うところがあるというものであります。