『難しい童話』

「百」という方からメールが届きました。メールにはURIが書いてあって、リンクをたどると、以下のホームページにたどり着きました。
難しい童話
内容を読んでみると、非常に経済のことをよく考えている方のようでした。「これまでの経済理論とは、発想が根本から異なっています。」とありましたが、現代経済学の考え方からすると、非常にスタンダードな議論をしているのではないかと思いました。
論旨は以下のようにまとめられると思います。

時間が経ると、生産効率が向上し、余剰の労働力が発生する。余剰の労働力は、新しい産業によって吸収され、その分だけ経済は発展する。しかし、現在は余剰の労働力を吸収できる新しい産業が生まれず、そのため失業が発生し、経済が停滞している。
そこで、さまざまな環境問題に取り組むような環境産業に資金が流れるような施策を取ることで、環境産業を育成し、それによって失業の問題と経済停滞の問題を解決するべきだ。また、その施策は、環境問題についても同時に解決することができるので、一石二鳥だ。

前半は、現在の経済状況に対する経済学的な分析です。この部分は、非常にスタンダードな経済学の議論であって、経済学を理解している人ならば、異論はないと思います。
それに対し、後半は、具体的な経済施策の提言です。この部分については、さまざまに議論の分かれるところだと思います。一般的な理解として、前半のような経済状況(つまり、経済停滞)が発生したとき、ケインズ経済学と新古典派経済学では、以下のように対応が変わります。(理解のため、大鉈を振るっています)

ケインズ経済学:
 政府が支出をすることによって、総需要を増加させ、需要と供給を均衡させる。その際、乗数効果の大きい産業へ政府支出を振り向けると効果が大きい。
新古典派経済学
 新産業を興すことによって、余剰労働力を吸収する。そのために、規制緩和構造改革を行って、既得権をもつ従来の産業が握っているリソースを解放し、新産業が興りやすいように促す。

上記を考慮すると、「百」氏の提言する施策は、ケインズ経済学に近い施策だと思われます。ただし、「百」氏の場合、純粋に経済学的な議論を進めるのではなく、環境問題という観点を取り入れて、経済問題と環境問題を同時に解決する方法を提言しているところが、上記の枠組みに入らないところでしょうか。
「百」氏の提言に対する反論としては、ケインズ経済学に対する新古典派経済学の議論がそのまま当てはまるのではないかと思いますが、それには、触れないでおこうと思います。