金融機関の静脈認証

複数規格が並存している方が、偽造時の被害の拡大を防ぐという意味で、より望ましいのではないのか?

産経ニュース
キャッシュカード偽造対策 「指」か「手のひら」か 生体認証で規格争い
指か、手のひらか−。偽造キャッシュカード対策の切り札として、身体の一部で本人確認をする生体認証技術の導入をめぐり、金融界に前代未聞の規格争いが展開されそうだ。富士通が開発した「手のひら静脈認証」を東京三菱銀行や一部地銀が導入。対抗して日立製作所が開発した「指静脈認証」は、みずほ銀行日本郵政公社が導入を検討している。今後、地銀も巻き込んで二陣営に分かれることが予想され、「VHS対ベータ」で争ったかつてのビデオのような規格競争に発展する可能性も出てきた。(渡辺浩生)
「金融界のデファクト・スタンダード(事実上の標準規格)をめぐる争いになる」。ある大手銀行幹部は予言する。
生体認証の中でも静脈認証を取り入れたキャッシュカードは精度や偽造の難しさ、利便性などから有効なスキミング被害防止策として、採用する動きが広がり始めた。
現在、金融機関向けの生体認証技術は富士通の「手のひら認証」と、日立製作所による「指認証」の二つがある。
どちらも、希望者があらかじめIC(集積回路)チップに静脈のパターンを登録。カードで現金を引き出す際に、現金自動預払機(ATM)に設置された読み取り装置に部位をかざす。投射した近赤外光から静脈パターンが抽出され、本人と確認する仕組みだ。
金融機関の受注は富士通が先行した。東京三菱銀行が昨年十月、手のひら認証を取り入れたクレジット機能付きのキャッシュカードを大手行で初めて発行。十月に東京三菱と統合するUFJ銀行も導入の方向だ。地銀では池田銀行大阪府)が今夏を予定している。
日立も昨年秋から銀行界への売り込み攻勢をかけた。みずほ銀行は両社の技術を比較検討しているが、日立の指認証採用が有力視されており、顧客調査も含めた本格的な検討に入る見通しだ。日本郵政公社もみずほとともに指認証を採用する方向とみられる。
三井住友銀行も生体認証を検討中だが、指か手のひらかは「全く白紙」(幹部)。地銀勢は「どちらが優勢になるか様子見」(業界幹部)という。
一方、偽造防止にどちらが優れているか「客観的データはない」(システム関係者)。ただし、手のひらは「抵抗感が少なく自然。指では指紋を取るというイメージが持たれる」(富士通)といい、指は「手のひらに比べ読み取りの範囲が狭く、装置も小型で使い勝手がいい」(日立製作所)とされる。
ちなみに、東京三菱が採用した富士通のメーンバンクはみずほコーポレート銀行。企業系列とは無関係に、認証部位の違いによって金融界が二分される可能性もある。ただ、「顧客の利便性を考えれば一本化すべきだ」(大手行)という声が上がるのも事実だ。