敵対的買収への対抗策の可否

アメリカでは、非常に広範で強力な敵対的買収への対抗策が、企業に許されているのですが、それを日本にそのまま輸入することは、日本企業の買収を必要以上に困難にして、経営者が恣意的な経営を行ったり、資源の有効活用を妨げて経済の活力を奪ったりする危険性があると思います。(ちなみに、アメリカで可能な買収対抗策として有名なものにポイズンピルがあります。これについては、「http://blog.drecom.jp/fallin_attorney/archive/116」に詳しいです。また、欧州では、買収対抗策はアメリカと比較してあまり許されていません)
アメリカでは、HPのフィオリーナCEOが退任したように、経営者は経営成績を上げられなかったことの責任を厳しく問われます。それほど株主の力が取締役会に与える影響は強いので、買収に関しても、取締役会は、株主の意向を常に意識して、買収を受けるのか反対するのかを決めます。取締役会は、株主に対して、非常に重い説明責任を持っているからです。
しかし、日本の習慣では、株主は取締役会に対して口をはさまないことになっています。なので、経営者は株主の意向を無視して経営を行うことができます。株主に対する説明責任も、形式的な説明を行えば、それで説明責任は果たしたと考えられています。このように株主によるガバナンスが働かない中で、強力な買収対抗策を取締役会に与えることは、取締役会の株主無視の態度をますます加速させかねないと考えています。