技術者は経営に興味を持つべきか?
技術者は技術のことだけを考えていてはいけないということを、昔からよく耳にするのですが、その耳にする文脈では違うでしょと思うものの、文脈を離れた場合には技術以外にも興味を持つべきだというのは本当だと思います。
よく聞く、技術者が技術のことだけを考えてはいけないという話は、技術者も売上や利益に興味を持てというような話が多いですが、そんなことはどうでもいいことです。会社という組織は、みんなが売上や利益に興味を持たなくても良いように設計されていて、売上や利益に興味を持ってはいけない人が売上や利益に興味を持つことで起こる問題だって少なくないんです*1。技術者は、一義的に技術に興味を持つべきで、高い技術を提供することで会社の活動に貢献するのがお仕事ですから、持てる力の大部分を技術向上につぎ込むことは正しいことです。技術的に難しいことを営業的な視点でOKして会社に損害を与えるようなことは、技術者としての背任行為です。そのような技術者に対して、売上や利益のことを求めるのは、その会社の営業やマネジメントの能力不足を自ら告白しているに等しいことです*2。
しかし、それとは別に、技術者は、自分の人生を守るために、経営のことについて興味を持つ必要があります。技術者が幸せに技術に専念するには、会社という器が必須です。会社という仕組みの中で、営業職と技術職が分業されることで、技術者が技術に専念することができるのです。ですから、技術者にとって、会社を見る眼を身に付けることは自分の人生を守るためにとても重要なことです。そのためには、会社が利益を生み出す仕組みを知り、会社の財政状態を分析する術を身に付け、業界でどういう会社が今旬を迎えていて、次に旬を迎える会社が何であるのかに常に気を配っている必要があります。
技術者は、株式のことをよく理解する必要があります。技術者が、自ら起業することは得策ではありません。なぜなら、起業とは技術者が技術から離れて経営や営業を仕事の中心に置くことを余儀なくされるからです。しかし、優秀な技術者は優秀な経営者、優秀な営業、優秀な医者、優秀な弁護士、優秀な会計士、優秀な政治家、・・・と同じくらいの報酬で報いられるべきだと思っています。特許を取得して、それを特許収入を得るというアイデアもありますが、一般的に適用可能な術ではありません。株式のことをよく理解して活用するということが、より一般的に適用可能な術ではないかと思います。株式といっても、デイトレをやれとかそういうことではなく、自社株を買うことのメリット・デメリットを考えたり、IPOの活用方法を考えたりすることを言っています。大まかに言って、会社から給料をもらうだけではなく、株式を通じて会社の規模が大きくなることの恩恵を享受するということです。