では、10倍の生産性を持つXさんはどうすればよいのか?

[id:lethevert:20070222:p1]のモデルは、簡潔ながら結構示唆に富んだ結論を導くことができます。
先の結論は、Xさんがその能力にも関わらず、平均的な報酬しか受け取れない理由を説明しましたが、ではXさんがその能力を生かしてより高い報酬を得るにはどうすればよいかを考えます。ここでは、3通りの方法について考えます。

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1つ目は、Xさんがプログラマという職種からプロジェクトマネージャーという職種に転向することです。
ここでは、プロジェクトマネージャーというグループは平均的な生産性がプログラマのグループの2倍であり、さらに、Xさんはプロジェクトマネージャーとしては平均的なプロジェクトマネージャーの2倍の生産性を発揮できるとします。
先に見たとおり、報酬は個々人の生産性ではなくグループの平均的な生産性に対応する額になるので、Xさんがプロジェクトマネージャーに転職すれば、Xさんの報酬はプログラマの時の2倍になります。
ここで面白いのは、Xさんはプロジェクトマネージャーに転職することで生産性が下がったにも関わらず、報酬が増大したというところです。つまり、プログラマの平均的な生産性をpとおくと、Xさんのプログラマとしての生産性は10p、プロジェクトマネージャの平均的な生産性は2p、Xさんのプロジェクトマネージャとしての生産性は4pで、Xさんがプログラマとして働いたときの40%の生産性にしかなっていません。

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2つ目は、Xさんがプログラマではなく、平均の5倍の生産性をもつスーパープログラマの募集をしている企業を探して、そこに転職することです。そうすれば報酬は5倍になります。
ところで、プログラマとスーパープログラマというのは、やっている仕事はほとんど同じなので、スーパープログラマというグループを採用基準に置くことは、それを見分けるノウハウをもっていないとできないことです。これは、採用側に回って考えると、重要なのに見落としがちなところです。

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3つ目は、Xさんが独立して、個人事業をはじめることです。こうすれば、生産した分が報酬になるので、ギャップはなくなります。
ただし、この場合は、プログラマ以外の仕事もしなければならなくなるので、10倍というわけにはいかず、場合によってはサラリーマン時代よりも生産性が下がる可能性もあります。

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ところで、生産性という言葉をいい加減に使うことで、必要以上に非現実的な部分があったりしますが、その辺は分かってやっているのでご了承ください。丁寧に考えて説明すると、長くなってしまって論旨が曖昧になってしまうので。