起業のテラ銭

「財産を作るためにギャンブルをやるのはナンセンスで、起業を行いなさい」という主張を、ここ最近、非常にたくさん見かけるようになった。さらに過激な「サラリーマンをやっていては、一生かかっても財産は築けない。財産を築くには起業を行うべきだ」という主張も見かける。


しかし、実際、よく考えてみて、起業はそんなにお得なのか?


ギャンブルが投資として非効率であることの説明として、「テラ銭」の存在が指摘される。宝くじが50%くらい、競馬が25%くらいだそうだけれど、このテラ銭の存在のせいで、賭けた側は損をすることが運命付けられているという話だ。
ギャンブルと起業の比較の際、ギャンブルの側のテラ銭の存在は強調されるものの、起業の側のテラ銭の存在は無視されている。
起業の場合、胴元は、「起業ビジネス」で設けている人たちだ。つまり、コンサルタント、会計士、税理士、不動産仲介業、建築業、銀行、証券会社、弁護士、行政書士などだ。これらの人々は、よってたかって、起業家からお金を奪い取っていく。起業するときは、これらの胴元に支払うテラ銭を上回るだけの収益をあげなければ、勝てないのだ。
このハードルがどの程度高いのかは、周囲を見渡して、起業で成功している人が、どの程度いるのかを考えてみればすぐにわかる。


さらに、起業のリスクとして、あまり指摘されていないものとして、収益の偏在がある。
たとえば、宝くじは、大半の人がはずれるのに対して、1等+前後賞で3億円もの大金が手に入る。非常に収益が偏在している極端な例だ。
起業はどうだろう? こちらも、失敗して破産する人、とんとんでやっていくのが精一杯な人が大半のなかで、信じられないほどの大金を手に入れる人がいる。これも、非常に収益が偏在している極端な例と言える。
このような、収益の偏在があると、平均収益(収益の期待値)が、大半の人の実際の収益よりも、大幅に高くなり、判断を誤らせる原因となる。


それに対し、評判の悪いサラリーマンは、テラ銭として取られるのは、勤務している会社の利益、社会保険などで、実際、それほど多くない。さらに、収益の偏りも少なく、ギャンブル性の低い収入を期待できる。