ストックオプション

http://www.mainichi-msn.co.jp/keizai/wadai/news/20050126k0000m040072000c.html
ストックオプション:利益は給与所得 最高裁が初判断
ストックオプション(自社株購入権)で得た利益をめぐり、米国企業の日本法人の元社長が「『一時所得』の約2倍の税額となる『給与所得』として課税したのは違法」として、国税当局の課税処分取り消しを求めた訴訟の上告審判決が25日、最高裁第3小法廷であった。藤田宙靖(ときやす)裁判長は「職務遂行の対価であり、給与所得と言うべきだ」と初判断を示し、元社長側の上告を棄却した。国税当局逆転勝訴の東京高裁判決(昨年2月)が確定した。
ストックオプション訴訟は昨年末現在、全国で104件起こされ、地裁レベルでは判断が分かれてきた。高裁では国税側勝訴が続いてきたが、最高裁が高裁判決を支持したことで、同種訴訟に多大な影響を与える。
判決はストックオプションの行使権が(1)本人が死亡すると消滅する(2)他人に譲渡できない−−ため「会社が元社長に与えた利益と言え、給与所得に当たる」と指摘。元社長の勤務先は子会社だったのに、親会社からストックオプションを与えられた点については100%出資の子会社だったことを重視。「元社長は親会社の統括の下で勤務していたのだから、職務の対価であることは明らか」と判断した。
訴えていたのは大手半導体装置メーカー「アプライドマテリアルズ」の日本法人元社長、八幡恵介さん(70)。
元社長はストックオプションを行使して得た96〜98年の利益約3億6000万円を「一時所得」として税務申告し、税金を約1億円と主張した。だが国税当局は「給与所得」として約1億8000万円を課税した。
東京地裁は03年8月、「市場の株価から原告が売却時期を判断して得る利益だから、会社から与えられた給与とは言えない」と元社長の主張を認めた。だが東京高裁は昨年2月、「利益額は株価の変動に左右されるものの、要職にある従業員らの貢献に対して支払われる労働の対価であることは否定できない」と逆転判決を言い渡した。
この日は「マイクロソフト」日本法人の社員が約800万円の課税処分の取り消しを求めた同様の訴訟に対する決定もあり、最高裁第3小法廷(藤田宙靖裁判長)は社員側の上告を棄却。国税側勝訴の東京高裁判決(昨年2月)が確定した。【小林直】
▽東京国税局の話 主張が認められた妥当な判決だ。
▽八幡元社長の話 給与所得とは何かという一般論を示さないまま、国税当局の処分を追認しただけの判決で、納税者として承服できない。
◆裁量課税の限界露呈=解説
ストックオプション(自社株購入権)を巡って多発した納税者と国税当局の紛争は25日の最高裁判決で決着をみた。結論は国税当局の勝訴だが、104件もの同種訴訟が起きた原因は法整備をしないまま課税基準を急に変えた国税当局の対応にあり「裁量課税」の限界を露呈したとも言える。
ストックオプションは97年ごろまで、その行使益を税金の安い「一時所得」と認定されることが多かった。だが、その後、制度の急速な普及に伴い、国税当局は約2倍の所得税を課す「給与所得」と意思統一を図り、納税者は猛反発した。
変化する時代への対応を誤ったという点では、旧日本興業銀行に対する課税処分も同様だ。住専処理が問題化した際、不良債権処理の会計処理について法整備を行わなかったことから訴訟に発展。最高裁は先月24日、国税当局の裁量課税を違法として、約1502億円の課税を取り消した。旧興銀への返金に伴う利子分約1000億円は血税で賄われるため、課税ミスが国民に巨額の負担を強いることになった。
二つの訴訟について、あるベテラン判事は「国税当局が裁量に頼りすぎているという印象を受ける」と指摘する。国税当局には今後、課税基準を変更する際の納税者への適切な説明や、紛争を予防するための的確な法整備など、慎重な対応が求められる。【小林直】
■ ことば(ストックオプション) 事前に決めた価格で自社や親会社の株式を取得できる権利。業績が好調なら株の市場価格が上昇するため、売却により利益を得られる。勤労意欲を高める効果があるとされ、米国では80年代から本格的に導入された。日本企業には97年の商法改正で解禁され、03年6月末までの累計で、上場企業のうち1175社が導入している。
毎日新聞 2005年1月25日 20時21分

http://www.mainichi-msn.co.jp/keizai/kigyou/news/20050126k0000m020120000c.html
ストックオプション最高裁判決 使い勝手悪くなる
ストックオプション(自社株購入権)訴訟の最高裁判断が示されたことで、企業側は今後、一時所得課税に比べて税率の高い給与所得課税を前提に、ストックオプションを活用しなければならなくなった。権利行使をして、取得した株式を持ち続ける場合は、現金収入がないのに、税金支払いのためにより多くの資金を用意しなくてはならなくなり、「使い勝手が悪い」(大手メーカー)状態になる。
ただ、ストックオプションへの課税は、▽受け取り手が発行会社(子会社を含む)の役職員▽付与から2年間は権利行使しない▽取得株式の総額が年間1200万円以下−−などの要件を満たせば、株式売却時まで課税が繰り延べされる優遇措置がある。その場合、株式の取得時は非課税のため、ストックオプション訴訟で争われた「給与所得か、一時所得か」という問題は起きない。
市場関係者は「優遇措置の条件を満たさないストックオプションは税の壁に阻まれて使いづらくなるが、優遇措置を受けるケースは多く、判決の影響はそれほど大きくないとみられる」(大手証券)と冷静に見ている。
ストックオプションは、株価が上昇するほど、多くの利益が得られるため、業績と報酬を連動させる仕組みとして普及してきた。日興コーディアル証券などのまとめでは、04年6月末までの累計で日本の上場企業の約4割に当たる1300社以上が導入を決めている。
【塚田健太】
毎日新聞 2005年1月25日 23時36分

ストックオプション裁判については、「http://www.torikai.gr.jp/zsoshou/index.html」に詳しいです。もともと、税務当局がストックオプション所得を「一時所得」として申請するよう指導していたのを、途中から「給与所得」として指導するよう変更し、過去にさかのぼって納税するよう要求したことがことの始まりだったようです。
私の感想としては、ストックオプションが給与所得であることはまあ理解できるのですが、税務当局が根拠となる法律の改正なく見解を変更できるという現状には、疑問を感じます。そのような態度をとる税務当局に対して訴訟を通して白黒をはっきりさせようとした行動は理解できると思いますし、そのような税務当局の態度に対して、コメントをつけていない最高裁の判決には、今ひとつ納得できない気もします。