10倍の生産性があっても、報酬が10倍にならない理由を考える

経済の素人談義ということで、表題のようなことをちょっと考えてみようと思います。

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出発点は、「企業は採用時に、個別の応募者の生産性を知ることはできず、応募者がある生産性のグループに属しているかどうかのみを知ることができる」という仮説です。これは、誰かが言っていた話ではなくて、私が勝手に思っていることです。
あるグループに属している応募者は、採用したときにはそのグループの平均的な生産性を発揮することが期待されています。なので実際には、その応募者は平均以上の生産性を発揮するかもしれないですし、平均以下の生産性にとどまるかもしれません。重要なのは、採用の段階では、そのような個別の生産性は知りえないということです。
さらに、この「生産性のグループについては、社会全体である程度共有されている」ということを仮定します。つまり、企業Aで選考時に利用している応募者のグループ分けは、同業他社の企業Bで利用しているグループ分けとほぼ同じであるということです。以降は、話を簡単にするために、同業種では、同じグループ分けを利用していることにします。

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話を具体的にするために、例をプログラマにします。通常の10倍の生産性を持つスーパープログラマXさんについて考えます。
企業がXさんを採用するときには、Xさんはプログラマのグループに属しているかのみを判断することができます。果たしてXさんはプログラマのグループに属していることが確認されたので、Xさんは採用されたのですが、企業から見てXさんはプログラマの平均的な生産性を発揮することが期待されているので、Xさんに対する報酬はプログラマの平均的な額になります。
採用後、実際に働き始めると、Xさんの生産性が平均の10倍であることが判明しました。しかし、Xさんが転職をしたとしても、上述の理由で、プログラマの平均的な報酬でしか採用されないことが分かっているため、企業はXさんの報酬をプログラマの平均的な報酬をわずかに上回る額に増額するだけで、Xさんの転職をとどめることが可能です。

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ということで、10倍の生産性を持つ人が、10倍の報酬にはならず、平均をわずかに上回る報酬にしかならないという現象を導くことができました。