ソニーの新CEO ハワード・ストリンガー

日本企業のCEOに外国人がなることは、非常に珍しいというか、史上初めてくらいの勢いではないのでしょうか?しかし、今の日本の製造業の収益構造を考えると、今後、この傾向は他の製造業にも伝播していくと思われます。さらには、将来の日本経済の世界経済における比重を考えると、いち早く多国籍企業化することが10年後20年後を見据えた賢いやり方なのかも知れません。
ソニーは、ソフト部門に力を入れるあまりに、ハード部門が崩れたことが業績低迷の原因というのが一般的な理解かと思いますが、ソフトに強いストリンガーさんがCEOになるということは、ソフト重視の志向を継続するということなんでしょうか?
ちなみに、ハワード・ストリンガーさんとはこんな方です。

http://www.mainichi-msn.co.jp/it/computing/news/20050307org00m300037000c.html
ソニー:出井、安藤氏退任へ CEOにストリンガー副会長
ソニーは7日、出井伸之会長兼CEO=最高経営責任者=(67)と安藤国威社長(63)が退任し、ハワード・ストリンガー副会長(63)を出井氏の後任の会長兼CEOに、中鉢良治副社長(57)を安藤氏の後任とする人事を発表した。出井氏は最高顧問、安藤氏は顧問に退く。6月22日の株主総会後の取締役会で正式決定し、就任する。ソニーは、デジタル家電への取り組みが遅れたことで、主力のエレクトロニクス部門が不振に陥っており、経営陣を刷新し、本格的に立て直しを図る必要があると判断した。
外国人トップはソニーの創業以来、初めて。03年に社長人事などを決める委員の過半数社外取締役が占める「委員会等設置会社」に移行しており、今回の経営陣の入れ替えは社外取締役が主導したと見られる。米国流の経営手法が日本に広がってきたことを示す結果となった。
ストリンガー氏は、米国3大テレビネットワークの一つ、米CBSなどを経て、97年5月にソニーの米国法人である米国ソニー社長に就任。現在も会長兼 CEOを務める。音楽や映画などエンターテインメントのソフト部門を手がけ、昨年9月にソニーが米映画大手メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)を買収した際は、交渉の中心的な役割を果たした。
中鉢氏は技術系で、電子部品や製造部門を管轄している。新体制となるソニーは、ソフト部門をハワード氏が、ハード部門は中鉢氏が主導する形で経営を役割分担するものと見られる。
ソニーは薄型テレビなどデジタル家電への対応に出遅れたことで、主力のエレクトロニクス部門の業績が低迷。DVD(デジタル多用途ディスク)レコーダーの市場価格の下落などのあおりを受けて、今年1月に05年3月期連結決算の見通しを大幅に下方修正し、昨年10月時点の予想から売上高を2000億円少ない 7兆1500億円に、営業利益は500億円少ない1100億円に引き下げた。
出井会長はパソコン事業への貢献などから95年に社長に就任して以来、約10年にわたってソニーの経営をリード。00年に安藤氏が社長になり、出井氏は会長兼CEOとしてソニーを率いていた。
社長候補の一人として有力視され、家庭用ゲーム機「プレイステーション」の生みの親として知られる久多良木健副社長(54)は、担当のホームエレクトロニクス事業の収益が上がらず、取締役から退任。新設した「グループ役員」としてゲーム事業に専念する。(Mainichi Shimbun)
ハワード・ストリンガー氏 英オックスフォード大卒。米大手テレビのCBSから97年米国ソニー社長、98年同会長兼CEO。99年ソニー取締役などを経て、03年4月から副会長。同年11月COO兼務。英国出身。
中鉢良治(ちゅうばち・りょうじ) 東北大大学院修了。77年ソニー。99年執行役員、02年執行役員常務。04年6月から副社長。宮城県出身
ソニー
http://www.sony.co.jp/
2005年3月7日

http://www.mainichi-msn.co.jp/keizai/kigyou/news/20050308k0000m020145000c.html
ソニー:出井会長に逆風 米国流の経営陣刷新
ソニーの経営トップに、米国ソニーの会長兼最高経営責任者(CEO)を務めるハワード・ストリンガー副会長が就任する。創業以来初の外国人トップを登用したことは、常に新たな経営手法を取ってきたソニーの新機軸として、国内外に衝撃を与えた。日本企業がグローバル化したことを示す象徴的トップ人事なのか。「世界を代表する経営者」と一時はもてはやされた出井伸之会長兼CEOの現体制の危機がそれほど深刻だったのか。人事の背景を探った。【野原大輔、ワシントン木村旬】
◇唐突な退任 社外取締役が主導か
出井伸之会長の退陣は、ソニーが先んじて導入した社外取締役が主導した人事刷新という見方が広がっている。出井会長は7日の記者会見で、「そんなことはありません」と否定したが、「(構造改革が終わる)06年度までは現体制でいく」と繰り返し公言してきた出井会長らの退任は、あまりに唐突だった。
ソニーは04年3月期連結決算で、売上高の3割弱の2兆円余りを米国で稼いだ。日本国内とほぼ同規模。日本語が十分に話せないトップの登場は、ソニーが米市場をより一層重視していく姿勢を明確にした。しかも、今回の人事は、社長や会長が自らの進退を決める従来の経営者の論理では通用しない「米国流の経営」が日本に浸透するきっかけになる可能性がある。
ソニーは常に国際企業を意識し、先進的「企業統治」を目指してきた。70年にニューヨークで上場し、社外取締役設置。91年には外国人の社外取締役を登用、委員会等設置会社に03年移行した。現在の取締役16人のうち半数の8人が社外。そのメンバーもカルロス・ゴーン日産自動車社長や中谷巌UFJ総合研究所理事長、小林陽太郎富士ゼロックス会長など有力メンバーをそろえた。
社外取締役から見たソニーの最大の「弱さ」は利益率の低さにあった。ゴーン社長は03年に利益率10%を目指すよう注文をつけたという。出井会長は「07年3月期の営業利益率10%」を目標に掲げたが、05年3月期の見通しはわずか1.5%にすぎなかった。米国流経営から見れば、利益率の低さは致命的だった。
一方で、「社内にも不満が充満していた」(業界関係者)と言われる。大賀典雄名誉会長も昨秋、「ソニーのブランドはかつて一番だったのに、がっかりしている」と現在のソニーを憂慮する異例の発言をして、物議をかもすなど、出井会長への逆風は強まっていた。
携帯ゲーム機のプレイステーション生みの親で、出井体制の「申し子」として次期社長に有力視されていた久多良木健副社長(54)が取締役から退任することは、今回の人事が出井体制の否定だったことをうかがわせている。
◇ソフト重視に偏りハードの基盤崩れる
ソニーを取り巻く環境が変わった。(業績低迷の)責任は感じる」。7日の記者会見後、記者団にもみくちゃにされながら、出井伸之会長は退任の理由を語った。
出井氏はソニーが失敗続きだったパソコン事業を「バイオ」のヒットで成功させるなど、ソニーのブランド力を押し上げ、一時は海外からも注目される「カリスマ」的存在だった。00年に「出井・安藤(国威)体制」になってからも当初は売り上げを順調に伸ばし、音楽や映画などのソフトとの相乗効果を目指す「ハードとソフトの融合」という理念を強調してきた。
しかし、急速なデジタル化の波は、トップランナーだったはずのソニーを追い越してしまった。世界販売トップを誇るテレビでは、自社のブラウン管技術に強く固執し、各社が競って新製品を開発した薄型テレビの製品化が遅れた。DVD(デジタル多用途ディスク)関連製品でも、ソニーが中心となって開発したCDの活用にこだわり、市場投入が遅れた。「『ソニーという名前だけで売れる』というおごりがあったのではないか」とある幹部は振り返る。
パソコンの販売不振などから、03年1〜3月期に赤字に転落。日経平均株価バブル崩壊後の最安値を記録した「ソニーショック」が起きた。出井会長は2万人をリストラする構造改革計画を発表し立て直しを図ったが、デジタル家電で先手を打ち、V字回復を果たした松下電器産業とは対照的な結果となった。
出井体制では、伸び悩んでいた映画や音楽部門を軌道に乗せたが、開発現場には「ソフト重視の姿勢が強すぎて、しらけムードがあった」(業界関係者)という。
アップルコンピュータが昨年、音楽配信事業との相乗効果で、ソニーの「ウォークマン」から世界市場をさらっていったHDD(ハードディスク駆動装置)型デジタル携帯音楽プレーヤー「iPod」を大ヒットさせたことは、ソニーのハード面での敗北を際立たせた。ソニー幹部は「『iPod』こそ、ソニーが先に生み出すべき商品だった」と悔しがる。
実は、ソニーでもHDD型プレーヤーの商品化構想は以前からあったが、音楽ソフトをグループの事業として抱えるソニーは、楽曲の著作権などの絡みから二の足を踏み、商品化できなかった。
同業他社から「今や巨大なゲーム、ソフト会社」とやゆされる出井ソニーは「弱点」とされていたソフト部門を拡大したが、頼りにしていたハード部門の基盤が崩れ、「ハードとソフトの融合」という理念は看板倒れに終わった。
◇「大胆な行動」米国でも大きく報道
海外で知名度の高いソニーのトップに、外国人のストリンガー副会長が起用されたことは、米国のメディアでも、驚きと期待感を持って、大きく報道された。
7日付けのニューヨークタイムズ紙は1面で、「大半の日本企業の役員が、成果より忠誠心で地位を得てきた」と指摘。これに対し、ソニーが日本企業でいち早くニューヨーク証券取引所に上場するなど国際的経営の先駆けだったことを挙げながら、「ストリンガー氏に指揮を委ねるのは、日本企業の取りうる行動で最も大胆だ」と意外感を表明した。
そのうえで、同紙は「創業者の故・盛田昭夫氏は『ソニーは海外で製品を売るだけでなく、国際的思考を製品や経営に盛り込む潜在力も持つ』ことを認識していた。今回の人事は、その路線を完成させる」と、経営の“門戸開放”を評価した。
また、同日のウォールストリート・ジャーナル紙(同)も「ストリンガー氏の最大の課題は、ソニーの再生だ」と指摘。ストリンガー氏が米CBSでジャーナリストなととして実績を積んできたことを強調し、「同氏の経験が、トランジスタラジオやウォークマンという技術的な伝統が自慢のソニーにショックを与えるだろう」と、外国人トップが経営不振に陥ったソニーへの刺激剤となることに期待を示した。
ソニー社外取締役(8人)◆
中谷巌UFJ総合研究所理事長=取締役会議長
河野博文JFEスチール専務執行役員=取締役会副議長
・岡田明重三井住友フィナンシャルグループ会長=報酬委員会議長
小林陽太郎富士ゼロックス会長=指名委員会議長
・山内悦嗣三井住友フィナンシャルグループ取締役=監査委員会議長
カルロス・ゴーン日産自動車社長
・橘・フクシマ・咲江コーン・フェリー・インターナショナル社長
宮内義彦オリックス会長
毎日新聞 2005年3月8日 0時40分