ニッポン放送の買収に対する投資家としての評価

ニッポン放送の買収に関する議論では、これまで法律論や倫理性の観点からの議論が多かったですが、投資家(株主)の立場としてはどうだったのでしょうか?
一言で言えば、フジテレビとニッポン放送の経営者の投資家に対する関心の低さが、今回の買収を招き、さらに事態を悪化させたといえると思います。まず、よく指摘されるところでは、ニッポン放送が上場会社でありながら、株価を低いままに放置したこと。このため、常に潜在的敵対的買収の危険にさらされ続けていたわけで、その状態を放置した経営者には重大な責任があります。
また、フジテレビの行ったTOBの価格が低かったということもあります。TOBの後にライブドアが買収に乗り出したということは、TOBの価格を超える価格でも、まだ買収価値があると判断されたということであって、つまり、TOBの価格そのものが低すぎたといえるでしょう。おそらく、市場価格からTOB価格を計算したと思いますが、そもそも激安に放置された市場価格を基準にTOB価格を計算することに問題があったのです。
さらに、ライブドアによる買収が始まった後も、TOB価格を変更することはありませんでした。このことは、既存株主に矛盾を含む決断を突きつけることになりました。結果、不明瞭な取引上の圧力を受ける企業のみがTOBに応じるという結果になったのです。本来、このような場合には、TOBの価格水準に間違いがあったことを認識して、TOB価格を上げるべきです。TOB価格を上げることで、既存株主が納得してTOBに応じることができるからです。
一連のフジテレビとニッポン放送の対応を観察すると、投資家(株主)に対する極端な軽視の姿勢が見て取ることができます。
ここからは想像ですが、日枝さんは、今回の買収騒動を、社内政治の派閥争いの感覚で対処しようとしているのではないかと思います。しかし、現実に起こっていることは社内政治とは違います。たとえライブドアの買収を阻止できたとしても、投資家(株主)の信頼を失うことは、日枝さんにとっても負けを意味することになるのではないでしょうか?